カテゴリー : days

clair de lune

久しぶりに気持ちよく晴れ上がった日曜日の朝。
久しぶりに自分の部屋で目覚めた日曜日の朝(笑)

そんな休日の早朝にテレビから流れてきた,ドビュッシー「ベルガマスク組曲」から『月の光』。
(NHK-E「スーパーピアノレッスン」)

松浦俊夫氏のイベントのラストではいつも,きらきらと輝くミラーボールの光線と共に『月の光』の美しい旋律を全身に浴びたなぁ・・・
と思い出しながら,フレンチトーストで朝食。
僕の好きな『ベルガマスク組曲』はギーゼキングのバージョンです。古くて録音状態は悪いけれど。

今週はクラシカルな音をたくさん聴いてみようと思います。


失われた一日

どんな人生にも「失われた一日」がある。「これを境に自分の中で何かが変わってしまうだろう。そしてたぶん,もう二度ともとの自分には戻れないだろう」と心に感じる日のことだ。
その日は,ずいぶん長く街を歩きまわっていた。ひとつの通りから次の通りへと,ひとつの時刻から次の時刻へと。よく知っているはずの街なのに,それは見覚えのない街みたいに見えた。
どこかに入って酒を一杯飲もうと思ったのは,あたりがすっかり暗くなってからだった。ウィスキーのオンザロックが飲みたかった。少し通りを歩いて,ジャズ・バーのような店をみつけ,ドアを開けて中に入った。カウンターとテーブルが三つほどの,細長い小さな店で,客の姿はない。ジャズがかかっている。
カウンターのスツールに座って,バーボン・ウィスキーをダブルで頼んだ。そして,「自分の中で何かが変わってしまうことだろう。もう二度ともとの自分には戻れないだろう」と思った。ウィスキーを喉の奥に流し込みながら,そう思った。
「何か聴きたい音楽はありますか?」,少しあとで若いバーテンダーが僕の前にやってきて尋ねた。
顔を上げて,それについて考えてみた。聴きたい音楽?そう言われてみると,たしかに何かが聴きたいような気もした。でもいったい僕は,ここでどんな音楽を聴けばいいのか?僕は途方に暮れた。「『フォア・アンド・モア』」と,少し考えてから言った。そのレコードの黒々とした陰鬱なジャケットが,最初に・・・とくに明確な理由もなく・・・頭にぽっと浮かんだのだ。
バーテンダーはレコード棚からマイルズ・デイヴィスのそのレコードを取り出して,プレーヤーに載せてくれた。目の前に置かれたグラスと,その中の氷を眺めながら,『フォア・アンド・モア』のA面を聴いた。それはまさに僕の求めていた音楽だった。今でもそう思う。そのときに聴くべき音楽は『フォア・アンド・モア』しかなかったんじゃないかと。
『フォア・アンド・モア』の中でのマイルズの演奏は,深く痛烈である。彼の設定したテンポは異様なまでに速く,ほとんど喧嘩腰と言ってもいいくらいだ。トニー・ウィリアムズの刻む,白い三日月のように怜悧なリズムを背後に受けながら,マイルズはその魔術の楔を,空間の目につく限りの隙間に容赦なくたたき込んでいく。彼は何も求めず,何も与えない。そこには求められるべき共感もなく,与えるべき癒しもない。そこにあるのは,純粋な意味でのひとつの「行為」だけだ。
「ウォーキン」を聴きながら(それはマイルズが録音した中でいちばんハードで攻撃的な「ウォーキン」だ)自分が今,身体の中に何の痛みも感じていないことを知った。少なくともしばらくのあいだ,マイルズがとり憑かれたようにそこで何かを切り裂いているあいだ,僕は無感覚でいられるのだ。ウィスキーをもう一杯頼んだ。
ずいぶん昔の話だけれど。
(村上春樹著『ポートレート・イン・ジャズ』より)

ハルキ氏の言う「失われた一日」は,唐突に僕のところへやってきた。
それは2006年5月15日だった。
昼休みに携帯へ連絡をもらって,淡々と事実のみを伝えられた。
小さな声で語られたのは,推測も省察もない,厳然たる事実のみ。
それは確かに,僕の人生の中で最も大きな出来事だった。
しばらく経って陽が翳り色を失った街をゆっくり歩きながら感じたのは,「僕の中で何かが変わってしまうんだろうな」という非再帰性と喪失感。
街の人混みを進んで行くと雑踏の人々はみんな幸せそうに見える。その姿を見ながら「平凡な日常の希有性はこの人たちには理解出来ないだろうな」と勝手に思う。
そのままひとりで飲みに行く。丸い氷を見つめていると,前日に観返した映画『ベティ・ブルー』が何かの暗示だったのかな,とふと考えたりする。
その時の僕は何も聴きたくなかった。音楽には心を救う力があるのかな?と思った。映画には?本には?人との出会いには?と心の中で反芻し続けた。

村上春樹のほぼ全作品を読んできた自分には,ハルキ氏が経験した「失われた一日」の出来事は大体想像がつく。
そしてそれは僕の身に起こったこととかなり似通っている。

遅くに自分の部屋に戻ってきて,何の気なしに聴いたのはスタン・ゲッツの『Reflections』だった。


Breitling

女性のみなさんはきっと理解し難いことだと思いますが・・・
男って奴は何故か,スポーツカーや機械式時計などの「機械モノ」にハマってしまう悲しい生き物なのです。
宝飾的な部分には全く興味がないくせに,1本○○万円の腕時計を一目惚れでぽーんと買ったり。
もし彼氏がそんな奴だったとしても,そこんとこ大目に見てやってくださいね。

以下マニアックネタです(ご注意ください)

グラウンドアンカーの打設。
基本試験により基礎地盤の摩擦抵抗(τ=タウ)値を確認。
PC鋼線の引張荷重は25KN刻みで最大300KNまで。受圧版の面積で割り崩して単位面積当たり圧力は13.5~162Mp(メガパスカル)・・・
刻々と変わる計器の数字と電卓を交互に見比べて忙しい。
そこで腕時計が目に入る。
「こんな時こそ計算尺だ!」
回転計算尺を初めて実用的に使用。直感的かつ視覚的に読みとれるから,これは便利だなーと実感しました。
今後は海外旅行での為替レートとか,ジャンボジェット操縦する時の残燃料計算とか(笑),いろいろ使い倒そうと思ってます。


faire un mariage

友人が日記で「結婚観」について触れていました。
この機会に「結婚」そのものに対する僕の考えを少し記してみようと思います。

※結婚についての一考察。

以前,友人達と飲んでいた時,何かの弾みで結婚の話題になって,熱く激論を交わしたことがあります。
既婚者・未婚者に関わらず肯定的な意見が多かったのだけれど,「制度としての結婚」には批判が挙がった。
そのときの最終結論をひとことで言うと,「結婚とは,性の共産主義である」(過激ですねー)

20世紀は,経済上の社会主義・共産主義の隆盛と終焉の世紀であった。
21世紀はきっと,「性(広義では男女関係・人と人との絆)の共産主義」である結婚制度・家族制度は崩壊するのではないか?

ちょうど世紀が変わる頃,フランスでは結婚に代わる新しい制度である「PACS法」と呼ばれる法案が審議されていました。
「PACS」とは,フランス語で「連帯市民契約」の頭文字。
結婚と異なるのは,
・異性間だけでなく同性カップルも認められる。
・別れる際は一方的な通知のみでよい。相手の同意や裁判は必要ない。
同じなのは,
・税制上の優遇措置。
・子供の戸籍上の立場。婚外子にはならない。 

保守層には強硬な反対意見(倫理に反する,家族は国家の基盤であるなど)があったようです。
でも,既に産まれる子供の4割が結婚以外,というお国柄だけに,必要に迫られた制度なのかも知れません。

法律とか制度とか税制とか戸籍とか,そしてもっと言えば性別なんてものにも左右されずに,「この世界で出会ったふたり」として自由でいられたら,と思うのですが。(キザ?)

ミルト・ジャクソン『I’m Not So Sure』を聴きながら・・・
やっぴーでした。


Song For My Father

先週末3日間の放浪。
帰り際の出来事。
純粋にFamily Affairな話です。ドキュメンタリータッチなんでそのつもりで。

朝から歩く歩く。夕方,ホテルへ預けていた荷物をピックアップして,タクシーで浜松町駅へ向かう。
運転手さんと「貿易センタービル側は混みますよねー」などと世間話しながら芝公園沿いを走っていると,携帯に着信。珍しくお袋から。
涙声で「お父さんが入院した」
「!!!」
僕はかなり慌てていたんだと思う。
病院の名前も聞いていなかったし(または聞いたけど頭に残らなかった),タクシーを降りるときDMRの袋をひとつ忘れて運転手さんが階段の上まで追いかけてきた(ありがとう)。
空港からお袋の携帯へ電話するも病院内で電源オフらしく繋がらない。
フライト中,あらぬ想像ばかりがふつふつと湧いてきて落ち着かない。
親父はかなりハードかつ数奇な人生を送ってきた人で,とにかく我慢強い性格なのだ。それが急に入院?重いのか?意識はあるのか???・・・

着陸後,タクシーに飛び乗る。
病院の名前も分からないのに・・・と思っていたら,運転手さんがカーナビで実家近辺の病院を検索してくれた。電話番号も分かる。
かかりつけの病院の名前を思い出して,そこに電話すると・・・ビンゴ!!
そのまま高速でダッシュ。
9時頃病院に着いて救急外来へ。

お袋を発見。思わず「大変だったね」と抱きしめてトントンと背中をたたく。お袋に抱きつくなんて何年振りだろう?
で当の親父は,ベットの上で点滴中ながらもニコニコ。
良かったー・・・全身から力が抜けてヘナヘナ。
話を聞くと,この2,3日で急に体調が悪くなったので,自分で車を運転して(!)病院を訪れたとか。そして検査の結果「あなた即入院!」ってことになったそうで。
「白血球の値が増加」「右下腹部に強い痛みがある」
・・・ずばり虫垂炎の症状ですね。

そして,翌日曜日は救急車で転院して精密検査。
「虫垂炎。すぐ手術しちゃいましょう!」
外科医と麻酔医からしっかりインフォームド・コンセントを受けて,その1時間後にはもう手術開始。
「手術待合室」なるものに生まれて初めて入る。
持ってきた村上春樹の『東京奇譚集』を読んでいると,あっという間に手術終了。
外科医に呼ばれて,今まさに取り出してきた「虫垂」を見せられる。「ここが炎症を起こして・・・」
ちょうど奇譚集の『腎臓石』に差しかかっていたので,不思議なデジャブ感。
後で聞いた話では,親父はなかなか麻酔が効かなかったらしい(大酒飲みだから?)。
麻酔が効くまで,自分がダム建設技術者だった頃のケガの話を医師達としていて,それが外科医にはかなり興味深かったらしく,なかなか寝かせてくれなかったとか(笑)

術後も良好で,後は傷の快復を待つのみ。
仕事漬けの生活から抜け出せたと思ってゆっくり休んでください。


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